2008/10/11

アーノンクール・ウィーンフィル・モーツァルト

2年前の来日公演が放送されたものをDVDに録画して、何度も観ています。
持っている録画DVDの中で、特に繰り返して観る1枚です。

2年前にアーノンクールが来日したときは狂喜しました。
私が最も尊敬する現役指揮者の1人ですから。
全国各地・日本公演のほとんどを追いかけ回したものです。

ウィーンフィルで、東京・兵庫・川崎・東京・愛知・東京・東京
コンツェントゥスムジクス・ウィーンで、東京・京都・大阪・東京・札幌。

NHKで放送されたのは、2006年11月11日の
東京・サントリーホールでのウィーンフィルとの公演。

曲は、モーツァルトの交響曲第39番、第40番、第41番。
次の日の11/12にも愛知で同じプログラムでコンサートをやっています。

この2つのコンサートは、チケットを取るのが最も難しい公演でした。
東京公演は友人にも手伝ってもらって会員優先予約を9口を申し込み、やっと1口当選。
愛知公演は約1000席しか無いホールで、さらに地元会員優先もあったため、
一般発売されたのは数百席という激戦プレミアチケット。3分で完売しました。
その後ネットオークションでは20万もの高値が付いた公演です。
このチケットがとれた奇跡に感謝します。


そのモーツァルト。

「ウィーンフィルのモーツァルトはこうあるべき」と思っている人を
落胆させ、驚愕させるものでした。

落胆は聴き手のみならず、ウィーンフィルのメンバーの中にもいるようです。
今月の「音楽の友」には「アーノンクールは嫌いなので、彼が指揮をするときは
降り番にするように頼んでいる」との、某メンバーの談話がありました。

しかし、ウィーンフィルもプライドのある真のプロフェッショナル集団。
一旦ステージに乗ると決まったらまな板の上の鯉です。

指揮者がそう要求するなら100%やってやろうじゃないの!

という気概と気合いをビンビン感じます。
巨匠と、世界を代表する名門オーケストラががっぷり4つに組み合った横綱相撲。
ものすごい緊迫感・緊張感。

しかも後期3大交響曲を1晩で。
聴き終わった後にグッタリしてしまったのを今でもよく覚えています。

マーラーやショスタコーヴィチすら凌駕するようなおぞましいモーツァルト。
優雅さ・軽やかさとはほど遠い、ギチギチ・ギシギシなモーツァルト。
モーツァルトの音楽の持つ闇・毒・異次元世界をかいま見た気がします。

退廃的なのに、ウィーンフィルの気品と色気のある音!
これがそのおぞましさに一層の拍車をかけています。
まるでクリムトの絵のようです!

  モーツァルトの音楽は、決して心地よいだけのものではありません。
  「モーツァルトが胎教によい」なんてのを真に受けて
  こんな演奏をお腹の子に聴かせたら、いったいどんな子が産まれてくるのでしょうか?(笑)

これを聴いていたら、自分は廃人になるのでは?とまで思えてきます。

それでも繰り返し聴いてしまう、麻薬か媚薬のようなこの魔力。

この演奏を聴いたら、他のすべてのモーツァルト演奏が生ぬるいとさえ聞こえてしまう。

そんな危険で刺激的なモーツァルト。


ウィスキーを飲みながらこの異端児なモーツァルトを聴いていた秋の夜長でした。


この人がドン・ジョヴァンニをやったら、いったいどんなことになるのだろう・・・
一度実演を聴いてみたいものです。


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