2010/03/22

神々の黄昏

8年ぶりの大プロジェクト・トーキョーリングもいよいよ佳境ですね。


壮大な叙事詩4部作の最後を飾る、神々の黄昏が始まりました。


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オケはダン・エッティンガー指揮の東フィル。
弦は艶も厚みもあって良かったのですが、金管が・・・
音程悪いし、いいところでホルンが外して会場が固まった瞬間があったし、
超重要パートのバストランペットがショボショボだったし・・・
エッティンガーは2年越しでこの大作をよく振りきったと思いますが
肝心のジークフリートの死の場面が個人的には全然好みじゃありませんでした。
テンポ速めであの音楽にしっくりきません。
でも全体では中だるみする場面もほとんどなく、
休憩を挟んで6時間半、集中力が切れなかったのはすごいと思いました。
 (最後のカーテンコールで指揮者にものすごいブーを飛ばしている人がいましたね・・・
 そこまでする必要があるか?ってぐらい執拗で不快でした。
 周囲の良識ある観客達もみんなしかめっ面。)


歌手では、ブリュンヒルデを歌ったテオリンが素晴らしい出来でした!
これは本当に凄かった。
背筋がゾクゾクし「神がかっている」と感じさせる瞬間も。
今日はコレが聴けて大満足です。
一昨年トゥーランドットを聴いたときはここまでの歌手という印象はありませんでした。
今年秋には新国立劇場でイゾルデを歌うことになっていますが今から楽しみです。

ハーゲンを歌ったスメギも良かったのですが、
個人的にはもっとドスの利いた圧倒的な迫力が欲しかったところです。
これもテオリンが凄すぎた故の贅沢な感想なのかもしれませんが。


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演出は、ところどころ本質ではないところで楽しいのですが
全体的にはイマイチ・・・

「ジークフリート」「神々の黄昏」と通して、
ジークフリートが子供扱いされていて
「無双の勇士」とか言われても何だかチグハグです。

最後は指環がラインへ帰ったのだかよくわからないし、
ブリュンヒルデの死の描写があっさりしすぎですし・・・

最後の最後に現代の人々が出てきたのはなんだかよくわからなかったです。
「・・・というワケでした、ちゃんちゃん。」
と、昔話の終わりっぽくしたかったのでしょうか?
昨年の「ラインの黄金」の冒頭が、ヴォータンが
映写機の映像を眺めているシーンから始まったので
「これは、全編をヴォータンの回想記にするという算段かな?」
とも思ったのですが、それなら最後もヴォータンで締めるのが筋ですし。

でもジークフリートの死の場面の演出はなかなかよかったです。
死の世界への光だけがジークフリートを照らし、
ジークフリートはブリュンヒルデの幻影を見る。
誰も動かず、ただただ葬送行進曲が流れる場面には感動しました。


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それにしても、この作品そのものがすごい。
音楽は洗練の極致。
ライトモチーフがキラキラ・ヒラヒラ・絶妙に重なり合い、
川の流れのように色々な表情を見せながら切れ目無く変化を続けていきます。

モーツァルト的な「天才のひらめきの連続」を感じます。
ため息が出ます。
それがどっぷり6時間半。
ため息つきすぎて疲れます。(笑)

この作品に触れられることが幸せなのだな、と思いました。
作曲されたのは1876年ですが、日本で初めて演奏されたのは1987年です。



最後にいいことが1つありました。
初めて、バックステージツアーに当選しました!
終演後約1時間、舞台裏や舞台上を見学できるツアーです。


舞台の上に行って、舞台装置を見せてもらいながら舞台監督さんの解説を聞けます。
少人数なので、雑談っぽくいろいろな質問もできました。

自分も昔は音楽をやっていた人間ですが、
今日初めて知った舞台の裏側がいくつかありました。

舞台上には、歌手が正面を向いて無くても指揮者が見えるように
いくつかモニターがあるのですが、すべてアナログ映像とのこと。
デジタルは再生までに若干のタイムラグがあるので使えないのだそうです。

他にも、指揮者は黒い服を着ているので、指揮台の背後だけは壁が白くしてあるとか
求める音や演目に合わせてピットの床の高さも上下させるとか。
今回のリングチクルスではプロンプタを全く使ってないことにも驚きました。


舞台装置の写真を撮るのはNGですが、
舞台から客席方面の撮影はOKとのことでした。


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ニーべルングの指環、今回は昨年3月4月と今年の2月3月で4部作の上演でした。
ヨーロッパの歌劇場のように1週間で4部作はムリとしても、
1か月1作を4か月で上演、とかできたらいいですね。
ヨーロッパの歌手を2ヶ月3ヶ月も日本に拘束しにくいとか、
他の作品を上演する期間が2/3以下になってしまうとか、
いろいろ難しそうですが。


ちなみに・・・
オペラシティでオペラをやっていると思われていることがありますが、
オペラを上演しているのは隣の新国立劇場です。
オペラシティには大小のコンサートホールはありますが、オペラ劇場はありません。
経営母体も違うし、建物もつながっていません。
新国立劇場は文部科学省の運営です。
オペラシティは東京オペラシティ文化財団という、都の外郭団体の運営です。


神々の黄昏
http://www.nntt.jac.go.jp/opera/20000192_opera.html


デジカメを自宅に忘れて、この日の写真は iPhone 3G で撮影でした。
ピントも感度も画質もやっぱりきついですね・・・




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2 comments:

gosealhunt さんのコメント...

うらやましい! 素敵な公演だったのですね。ツイッターからもれ聞こえました。

liebejudith さんのコメント...

gosealhuntさん、
公演の質そのものはまだまだ日本の水準は高いとは言い難いのですが、この作品の実演に触れる機会そのものが貴重です。

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