2008/11/01

ディーヴァ

エディタ・グルベローヴァ。

間違いなく現役最高のソプラノでしょう。

マリア・カラス、エリザベート・シュワルツコップの実演を聴いていない世代の私には
グルベローヴァは間違いなく20世紀最高のソプラノ歌手です。
歴史に名を残す大歌手であることには誰も疑う余地は無いでしょう。

友人の中には、日本公演は全日程通い、最低でも毎年1度はヨーロッパまで
グルベローヴァを聴きに行くという人もいます。


数年前にミュンヘンでグルベローヴァの歌う「ロベルト・デヴェリュー」を聴いて
圧倒されました。

グルベローヴァは昨年春にも来日してリサイタルを開きましたが、
この秋はウィーン国立歌劇場の来日公演で、ロベルト・デヴェリューを歌う!


これは聴きに行かなければ!


ということで行ってきました。
今年、私が最も楽しみにしていた公演です。


会場は、東京文化会館。
指揮は、フリードリッヒ・ハイダー。
オケ・合唱はウィーン国立歌劇場。
出演は、エディタ・グルベローヴァ他。





今回のウィーン国立歌劇場の来日公演は3演目。

リッカルド・ムーティ指揮でモーツァルトの「コジ・ファン・トゥッテ」
小澤征爾指揮でベートーヴェンの「フィデリオ」、

そしてフリードリッヒ・ハイダー指揮で「ロベルト・デヴェリュー」。

この中でロベルト・デヴェリューの公演は異色です。

やってくるお客さんの9割以上は、「ハイダーの公演」ではなく
「グルベローヴァの公演」という認識であることは明らかです。


ちなみに、グルベローヴァがロベルト・デヴェリューを歌うときは
いつもハイダーの指揮です。

ウィーンでも、ミュンヘンでも、バルセロナでも、シュトゥットガルトでも。

   逆に言うと、ハイダーのグルベローヴァの伴奏ではない仕事は
   ほとんどパッとしないものばかり・・・(笑)
   まあ、ハイダーはグルベローヴァの元ダンナですから・・・


しかも、3演目の中ではロベルト・デヴェリューのみは舞台上演ではなく
オペラ・コンチェルタンテ。
舞台装置はなく、オーケストラが舞台上で演奏し、
その前で歌手が歌う、いわゆる「演奏会形式」です。

よっぽどのオペラ通でないと足を運ばないと思います。
チケットも最後まで売れ残っていました。

しかしオペラ通は3演目の中ではグルベローヴァ出演のロベルト・デヴェリューこそが
一番の目玉公演だということをよく知っているでしょう。

会場には小泉純一郎元首相のお姿も。


ロベルト・デヴェリューは、1人のソプラノのスーパースターのためにあるような作品。
今ではグルベローヴァ以外には歌う歌手がいない演目です。





その演奏は・・・


圧巻です!


参りました。


還暦を過ぎたというのに、まったく衰えないその声・そのテクニック。

楽器の名手のように、その声をカンペキにコントロールします。

ピアニシモからフォルテシモまでギュンギュン突き抜けてきます。

音程もバッチリ。

のどを温存するため、リハーサルではきつい部分を歌わなかったり
オクターヴ下げて歌う歌手が多い中で、
彼女は常に本番と同じテンションで望み、決して手抜きをせずに
本番と全く同じように歌うことに驚愕した
・・・という、某オーケストラ奏者のブログ記事を読んだことがあります。

他の出演者も、他の公演なら主要キャストを張れる実力を持っているでしょう。
しかし、グルベローヴァの声の前では彼女の引き立て役にしかなりません。
彼女は明らかに別格です。

最後のアリアでは背筋がゾクゾクきて、全身の毛穴から汗がブワッと噴き出すほど。

終わった後は放心状態です。

こんな体験をしたのは久しぶりでした。

小泉さんも「感動した!」とおっしゃったでしょうか?


グルベローヴァは、リサイタルなどでは舞台上に登場するだけで
ブラヴォーと盛大な拍手が飛び交うのですが・・・

今回はオペラなので、序曲が始まる時には歌手は舞台上にいません。
そして、出番になると袖から出てきて歌うスタイルなので
「登場するだけでブラヴォー」はありませんでした。


昨今の演奏会形式上演は、ステージ上に簡易な舞台セットがあったり
衣装や小道具があったり、ちゃんと演技があったり
照明による演出があったりすることも多いのですが・・・

今回はかなりコンサートに近い形式です。
舞台セットも照明による演出も無し。
グルベローヴァは第1幕・第2幕・第3幕でドレスを着替えていましたが
他の出演者は着替え無し。男性歌手は全員燕尾服です。


しかし、グルベローヴァの歌さえ聴ければ他は何も要りません(笑)
舞台セットも。演技も、演出も不要です。
他の歌手が誰であろうと、オケがウィーンでなくてもかまいません(^^;
  ・・・この日はそういうお客さんが多いのではないでしょうか。


オケは、はじめは少々音が硬い気がしました。
やはり「ウィーン国立歌劇場管弦楽団」という名前になると
ウィーンフィルよりは1段落ちるのは仕方ないでしょうかね。
 (ウィーンフィルは、ウィーン国立歌劇場管弦楽団の選抜メンバーです)

コンサートマスターはライナー・キュッヒル氏、
ヴィオラトップはコル氏(この人がいるとなんだか安心します)
クラリネットはペーター・シュミードル氏、
フルートは知らない人(シュルツ氏でもニーダーマイヤー氏でもありません)
ダブルリードはわかりません(汗;
ホルンはストランスキー氏かな?
トランペットは知らない人(シュー氏ではありません)
トロンボーンも知らない人(キュールベック氏でもバウスフィールド氏でもありません)

中でもホルンがイマイチでしたね・・・
音も細いし音程もアヤシイし、外すし。

ハイダーの指揮はさすが手慣れたモノです。
ちぐはぐ感など微塵も感じさせず、テンポもタイミングも歌手にバッチリつけていました。
 グルベローヴァの、ロベルト・デヴェリュー専用伴奏指揮者ですから(笑)


11/4、11/8とまだ公演があります。
チケットは少々高いですが、ムリをしてでもぜひとも聴きに行ってください。

http://www.nbs.or.jp/stages/0810_wien/roberto.html

グルベローヴァは、現役でいるうちにできるだけ聴いておくべき歌手であることは
間違いありません。

きっと一生の思い出になることと思います。



行けない方は、DVDで。


ドニゼッティ:歌劇《ロベルト・デヴリュー》



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4 comments:

匿名 さんのコメント...

liebeさんが東京文化で演奏会を聞いていた頃、わたしはむかいの西洋美術館で例のハンマースホイ展を観てました。爆
東京文化の演目をチェックして、まあ、ウィーンだわ、いいわね~♪と思っていたら、liebeさん聞いていたとは!

上野は、まだフェルメール展に大淋派展と見逃せない展覧会が多くて、今月は通いつめると思います。すっかり上野づいてるの。

ところで・・・
実は、最近、音楽史を学べるハンディな書籍を探しているんだけど、なにかこころあたりがあります?音楽に詳しいliebeさんならなにかいいもの知っているかと思って・・・。

明日4日はお誕生日ですね。
フライングながら、あけましておめでとう。

じゃなく

お誕生日 お め で と う ご ざ い ま す ★

ますます充実して喜ばしい一年となりますように☆

liebejudith さんのコメント...

りんさん、
ハンマースホイは私も行きたい展覧会です。
オススメ書籍は、「オーケストラの社会史」とか。
年男、いよいよ30代後半真っ盛りになってしまいます・・・

匿名 さんのコメント...

オススメ書籍あげてくださって、ありがとうございます。
さすがは、もと演奏家のliebeさんらしい、興味深い内容のようですね。著者のほかの本も気になりました。

ハンマースホイよかったですよ。
フェルメールなどオランダ絵画の影響をうけているというから、liebeさんも気に入るかも。

30代後半をむかえて、ますます楽しみな人生ですね。
プレゼントの素敵な名刺入れを見て、わたしも同じメーカーの財布がほしくなってしまいました。笑

liebejudith さんのコメント...

りんさん、
著者の大崎教授は、大学時代に私が受講した音楽史の担当講師でもありました。
なかなか興味深い授業をしてくれたのを今でも覚えています。

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