2009/11/23

ありがとうブロムシュテット氏

チェコフィルハーモニー管弦楽団来日公演
指揮: ヘルベルト・ブロムシュテット
曲目: ブルックナー作曲・交響曲第8番ハ短調(ハース版)
会場: サントリーホール大ホール


チェコフィルといえば、高貴でまろやかな音が印象的です。
個人的には、2000年の大晦日にプラハでジルヴェスターコンサートを聴き、
「20世紀最後の日に聴いたオケ」として思い出もあります。

ブロムシュテット氏はN響との長年の共演でなじみ深く、好きな指揮者です。
真摯で誠実で心に染みこんでくるような演奏をしてくれる指揮者です。
SKDやSFSとの録音も良い演奏が多く、
数年前のLGOとのブルックナーも心に染みいる名演奏でした。
各方面からの尊敬を集める名指揮者です。

そして、ブルックナーの8番。
高校生の頃から大好きな曲です。
しかしずっと「これは!」と思えるコンサートが無く、
しばらく実演を聴いていません。

そして日本が誇る名ホール、サントリーホール。
先日はオバマ大統領の演説も行われました。

オケ・指揮者・曲目・会場と4拍子揃ったこのコンサート。
以前から楽しみにしていました。


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ところが、結果はイマイチでした。
残念なことに、チェコフィルの技量の低下が著しいのです。
これは大予想外。

弦の厚み・艶やかさは失われ、
金管やティンパニの強奏は美しさを失った濁った音になり、音形の処理も雑だし、
ホルン・ワーグナーチューバ群の音程が合わずハーモニーが濁り・・・

こんなになってしまったチェコフィルを聴いて
とても悲しくなりました。

ブルックナーは演奏がとても難しい部類だと思います。
ブルックナーらしい音・響きを作るのがまず大変。
あまり上手ではないオケが演奏すると、響きの間が持たず、
テンポを速めに取らざるを得なくなったり、
各セクションのバランスが悪くてブルックナーの音にならなかったりします。
結果、曲そのものが持つスケール感・構築感と実演奏のテンポや響きが合わず、
なんだかチグハグな演奏になりがちです。

考えてみると、ブロムシュテット氏は5番や8番のような
構築的な音響を響かせる曲よりも4番や7番のような
メロディーラインを歌い上げる曲の方が向いているのかもしれません・・・
SKDとのブルックナーの録音も4番と7番ですね。

それでも「おおっ!」と思った瞬間は何度かありました。
特に、第1楽章、練習番号G、140小節目あたり。
ブロムシュテット氏にしか表現できない深遠な世界が表れました。
神がかっていました。
少し間が開いて、祈るような場面の表現が素晴らしいです。


全体の出来はイマイチでしたが、終演後は盛大な拍手とブラヴォーの嵐。

これもブロムシュテット氏の人徳と人気の表れでしょう。
体調が思わしくなく、もう来日は無いかもしれないと言われた時期もありましたが、
82歳にして元気なお姿を見せ、
ブルックナーの8番という大曲を振りきってもらえただけで感謝・感激ものです。

本当に「ありがとう」と言いたかったです。



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4 comments:

匿名 さんのコメント...

 そうかなあ・・・。私の席(2階LBブロック)から聴くこの演奏は,アンサンブル,音程,そしてオケ全体の有機的一体感-全てが,クーベリック指揮の演奏を別格とすれば,最高水準のものでしたよ。特にホルン・セクション(確かに,フィナーレ・コーダのヴァークナー・テューバは,緊張が頂点に達したようで,ビビッてしまったのが分かりましたが,それ以外は完璧。特に,親しくお話したこともある,主席のヤン・ヴォボジル氏の演奏は,神がかり的な素晴らしさでした。)の充実ぶり,そして,中~低弦の渋く底光りする音色と,有機的アンサンブルは,「ブル8」の最高の姿を現してくれました。腑抜けになった某イギリス人指揮者と,ソリスト集団の某ドイツ・オケより,感動は数段上でした。ブロムシュテットの最高に円熟したライフ・ワークたるブルックナーは勿論最高,そして,オケも全く想像以上の見事な演奏・・。ああ,本当に素晴らしい一夜でした・・・。

liebejudith さんのコメント...

匿名さん、
コメントありがとうございます。ホルンのトップを吹いていた方は素晴らしかったですね!私が神がかっている!と思った瞬間も、ホルンから導かれる世界でした。お知り合いなのですね。私が個人的に存じ上げている団員の方はみんな引退されたのか見あたらなかったのが残念です。

LONG さんのコメント...

私もかつて、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団とのブル7を
豊田市コンサートホールで聴いたことがありますが、なかなかよい演奏だったと
記憶しています。

そもそもliebejudith さんのブログを発見したのは、アーノンクール/ウィーンフィルについての
コメント拝見したときだったと思いますが、トヨタ不況のあおりか、同ホールでは
大物演奏家の公演が少なくなってしまったようです。

残念!

liebejudith さんのコメント...

LONGさん、
アーノンクールの来日と言えばちょうど3年前の11月でした。
もうそんなにおつきあいいただいてるのですね。
ありがとうございます。
豊田市はトヨタと運命共同体ですからね・・・
でもまだまだウィーン国立歌劇場のスポンサーは続けているので
そのうち豊田公演も復活するといいですね。

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