2008/07/19

朝比奈隆の芸術 ~ 2

関東地方も梅雨明けですね!

今月の NHK BS2「クラシックロイヤルシート」は朝比奈氏特集です。
http://www.nhk.or.jp/bsclassic/crs/index.html

先週放送された第2回を録画してあったのを、ようやく観ました。

第2回は、ベートーヴェンの交響曲第1番・第8番・第9番。

いずれも2000年の大フィルとの演奏です。


私は、ベートーヴェンが大好きです。

とても人間臭い音楽です。
まっすぐで、生きる喜びに溢れています。
聴く者に元気・活力をあたえてくれます。
人間ってすばらしい!と思えます。


もうちょっと音楽的な目で見ると、

様式感と調性感が素晴らしい。

交響曲第1番はハ長調。
交響曲第8番は変ロ長調。
交響曲第9番はニ短調。

調ごとに色ががらっと変わります。

その色の違いを最大限に活かしきっています。

こんなにも、ハ長調らしく・変ロ長調らしく・ニ短調らしく
曲を書けるなんて、聴くたびに衝撃です。

こうして連続で聴くとその差がはっきりわかりますね。



調性と、その響きについては諸説ありますが・・・

平均律で調律されている現代のピアノについては
調性による色の違いは事実上ほとんど無いと考えて良いでしょう。

しかし、ベートーヴェンの時代は鍵盤楽器でさえも
平均律ではありません。

調が変われば、本当に響きが変わりました。

転調は、今以上に絶大な効果がありました。

ピアノ曲はそれを前提に調を選択していることはほぼ間違いありません。


オーケストラで使われる弦楽器・管楽器は、調による響きの違いが出ます。

弦は開放弦であるC・G・D・A・Eなどとその倍音がよく鳴るため、
#系の調がよく響き、♭系の調では柔らかめな響きになります。

管楽器については、調による楽器の持ち替えもあるので何とも言えませんが・・・

現代の楽器はどんな調でも同じように演奏できるような工夫が凝らされていますが、
ベートーヴェンの時代の楽器ではその差はさらに顕著だったでしょう。


ベートーヴェンや先代の作曲家を尊敬する後の作曲家たちが
似た曲想の曲を書く際に尊敬の意味を込めて同じ調を採用したケースが多いということも、
「調性による響きの色」が定着した理由の1つと考えられます。

第9のニ短調にならった、ブルックナーの第9番やマーラーの第9番。

運命のハ短調にならった、ブルックナーの第8番やマーラーの第2番"復活"。

マーラーの第5番の嬰ハ短調は、
運命のハ短調をひねったものであることは想像に難くありません。


そして、朝比奈氏の演奏。

彼の演奏は、いつもながら剛毅で男気があり、骨太だな、と感じます。

最近は、こういう演奏をしてくれる演奏家はめっきり減ってしまいました。

生前、朝比奈氏の演奏をたくさん聴いておいて本当に良かったと思います。

彼は最後まで椅子に座らずにコンサートを指揮しました。

90歳を超えてもベートーヴェンやブルックナーの大曲を最後まで集中力を切らさず
演奏しきるその気力・体力に脱帽でした。



こちらは、私の秘蔵CDです。



朝比奈隆/新日本フィルによるベートーヴェンの第九と荘厳ミサ。

今は手に入らないはずです。

どちらもいわく付きの演奏です。

荘厳ミサは、朝比奈氏が体調不良のためいったんキャンセルし、
1年後に実現した演奏会のライブ収録です。

第九は、小澤征爾氏が体調不良のためにキャンセルしたため
朝比奈氏が代役で出演した演奏会のライブ収録です。

第九は私も聴きに行きました。

私は小澤征爾氏の演奏はあまり好みではないのですが、
朝比奈氏の演奏は大好きだったので、
新聞で急遽小澤氏に変わって朝比奈氏が第九をやる!という告知を見て
あわててチケットセンターに電話したのをよく覚えています。
 ・・・当時はインターネットによる情報やチケット予約はなかったので・・・


次回は今週末。シカゴ響とのブルックナーの5番とN響とのブルックナーの8番です。
http://www.nhk.or.jp/bsclassic/crs/index.html


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4 comments:

匿名 さんのコメント...

mixiからBurgです。

私はクラシックに関しては全くと言って良い程素人です。
でも美しいものは美しいと感じ取れる感性は十分に持ち合わせていると自負しております。

そんな私でも“ベートーヴェン”は知っている。
彼との出逢いは小学校の音楽室。

他の作曲家はカツラ(当時の私は本物の髪と思っていましたが)を被り小綺麗なのに、その中でバラバラの髪にしかめっ面のベートーヴェンの肖像画。
非常に印象的な出逢いでした。チョット怖い・・・と思ったのを覚えています。
聴覚が失われて行くという悲運も背負いましたが、それでも音楽への情熱を捨てなかったドラマティックな人生を送った方。

そんな彼の生誕地“Bonn”には是非とも行ってみたいと思っています。

興味はあるのですが、余り聴くことがなかったクラシック。(何年か前に流行った“ever!”“サラ・ブライトマン”を聴く程度)
現在はそれに触れる機会が多い場所に居りますので、是非ともこの環境を活かし、美しい音楽に触れる機会を増やしたいと思います。

私の知らないことばかりですが、その道に通じている方のお話は非常に興味深いです。

またの素敵な日記を楽しみにしております。

匿名 さんのコメント...

聞くだけの僕にとってもとても良く理解できます。音楽が聞こえてきそうでした。よければ、http://profile.ameba.jp/kaz-ikeda/をご訪問ください。

liebejudith さんのコメント...

Burgさん、
私は、ボンへは一度だけ行きました。小さな、キレイな街です。
西独時代、ここが首都だったなんて信じられないような小都市でした。
ボンやウィーンのベートーヴェンゆかりの地を巡ったのも楽しい思い出です。
フライブルグには「フライブルガーガロックオルケスター」という
素晴らしいバロックオーケストラがあります。
是非聴きにいらっしゃってください。

liebejudith さんのコメント...

Kaz Ikeda さん、
ありがとうございます。ブログへもおじゃましますね。

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