2008/07/24

朝比奈隆の芸術 ~ 3

今月の NHK BS2「クラシックロイヤルシート」は朝比奈隆氏特集です。

http://www.nhk.or.jp/bsclassic/crs/index.html



先週末に放送された第3回は、ブルックナーの交響曲第5番・第8番。



第5番は1996年のシカゴ交響楽団との演奏。

第8番は1997年のNHK交響楽団との演奏。







シカゴ交響楽団との第5番の演奏は、なんと80歳を過ぎてからの

朝比奈隆氏のアメリカデビュー公演でした。

DVDでもリリースされている演奏です。





朝比奈隆 シカゴ交響楽団 1996年アメリカ公演



相変わらず、このオーケストラのパワー・スタミナ・テクニックの

レベルの高さには脱帽です。



この演奏の評判が高かったため、次回の客演の話もあったそうです。

残念ながら2回目が実現する前に亡くなられてしまいましたが・・・







NHK交響楽団との第8番の演奏は、近年希にみるN響の名演奏なのではないでしょうか。

私も会場でこのコンサートを聴いていました。

数ある朝比奈氏のブルックナーの録音の中でも素晴らしい出来映えです。

集中力も高く、これぞブルックナー!というべき響きを堪能できました。



今は引退してしまった師匠の、気合い十分な演奏を聴けたのも

個人的には嬉しかったポイントです。

やはり、師匠の音は気品と風格があります。理想のプレイヤーです。



この演奏はCDとDVDでリリースされています。





朝比奈隆 ブルックナー:交響曲第8番





NHKクラシカル 朝比奈隆 NHK交響楽団 ブルックナー 交響曲第8番



私が初めて朝比奈氏の演奏を聴き、一気に氏の演奏の大ファンになったのも、

このブルックナーの交響曲第8番でした。

(このときは東京都交響楽団でした)







先週まで放送されていた、2000年の演奏と比べると

1996年、1997年の朝比奈氏は指揮ぶりも矍鑠としていて、

まだまだ元気だったことがよくわかります。



ブルックナーの巨大な音楽をこれだけ堂々と演奏できるとは!



日本にもこんな指揮者がいたことが誇らしくさえ思います。







・・・





個人的には、シカゴ響との演奏よりも

N響との演奏の方がずっとずっと好みです。



やはりアメリカのオーケストラの音作りは好みではありません。





どこが好みではないのか、考えてみました。





何というか、ニュアンスの幅が狭いと感じます。

(音量の幅はものすごく広いです。)





楽興的な意味でのリズム感や歌い回しよりも、

メカニカルな意味でのリズムやテンポの正確さを追求しているように感じます。



例えば、後期ロマン派作品における3連符は本質的には"ゆらぎ"だと思うのですが、

彼らは正確な正三角形を描くように、完璧に3等分します。





彼らの音程は正確です。完璧です。音量のコントロールも完璧です。

しかし、メーターで測った上での音程の正確さや、

オーディオのボリュームダイアルを回すような音量のコントロールだけではない、

微妙な音色や音量の陰影があってこそ「色気」が出るのではないでしょうか。





全体的に柔らかく太い音をしているのですが、

スイッチをパチン!と入れたような無機質な音の立ち上がりと

響きの均一さがイマイチ好きになれません。



「フワッ」「グワン!」というニュアンスや香りが欲しい場面でも

常に「バー」「ドン!」という感じに聞こえます。



なんだか、重量のある鈍器で突かれたような。





演奏者の視点から見ると、彼らのパワー・スタミナ・テクニックは

驚嘆すべきものがあります。



真似しようにも、なかなかできることではないでしょう。





しかし、音楽は、パワー・スタミナ・テクニックだけではないのだな、

とも改めて思いました。









次回は、NHK交響楽団とのブルックナーの第4番と第9番です。

http://www.nhk.or.jp/bsclassic/crs/index.html



今回の第5番・第8番と次回の第9番は、私が特に好きな曲です。

次回も楽しみです。





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5 comments:

匿名 さんのコメント...

こんばんは、お久しぶりのLONGです。

私は大の朝比奈ファンですが、実演は一度しか聴いたことがありません。
その代わり、様々な音源を集めて、氏の演奏を楽しんでおります。

私が朝比奈の演奏で最も好きなのは、『英雄』です。
今回放送された演奏は、以前『朝比奈世紀のベートーベン』
として放送されたときの録画DVDを、
何度も何度も聴きました。
この演奏を生で聴かれたなんて、うらやましい限りです。

大フィルとの演奏では、どちらかといえばベートーベンが好きです。
ブルックナーは、同オケの管の弱さが気になり、個人的にはN響などとの演奏を好んで聴いております。

シカゴ響とのブル5はDVD化されましたが、マスタリングがひどくがっかりしました。
以前放送された時の方が、デッドなホールではありますが残響がある程度収録されており、
このときの録音を好んで聴いております。
今回の放送は、どちらかというとDVDに近い音のように感じました。(若干修正されたような気もしましたが・・・。)

また、シカゴ響とのブル5では、2日目の演奏の録音を聴いたことがありますが、
こちらは更にテンポを落とした素晴らしい演奏でした。
現場に居合わせた方によると、初日は珍しくマエストロも緊張されていたようです。

シカゴ響が数年後に『朝比奈にベートーベンを演奏してもらおう』と、出演を打診したという話を私も存じ上げております。
残念ながら国内のオケの指揮を優先したいとのことで、断ってしまったようです。
もし実現していたら、ベト1&3を演奏していたに違いないので、
大変残念です。

liebejudith さんのコメント...

LONGさん、こんばんは。いつもありがとうございます。
朝比奈氏の英雄では、新日フィルとの演奏もすばらしかったです。

>ブルックナーは、同オケの管の弱さが気になり、個人的にはN響などとの演奏を好んで聴いております。

正直なところ、同感です(笑)
東響との9番&テ・デウムも素晴らしい演奏でした。

シカゴ響との5番はDVDも持っていますが、私もデッドさがとても気になりました。
以前のNHKでの放送ではもっと残響があったと聞いていますが、
先日の放送はそれほどではありませんでしたね。
でもおっしゃるとおり、DVDよりは改善されていたと私も思いました。

朝比奈氏の演奏をもっともっと聴きたかったですね。

匿名 さんのコメント...

こんばんは。

>DVDよりは改善されていたと私も思いました。

やはりそう思われましたか。
一応NHKも、DVD音声の評判が悪かったので、
マスタリングし直したのでしょう。
でも、変に手間をかけずに、以前の放送のまま放映して欲しかった、
というのが本音です。
やはり慣れないホール(異常にデッドなホール)での録音で、
苦労しているようです。

個人的には、DVDの映像とBSで放送されたときの音声を合体したDVD-Rを自分で作成し、
度々鑑賞しています。

ところで、私が聴いた2日目の演奏は、米国のFMで放送された物を
エアチェックした音源ですが、こちらはさすがに慣れた方が録音に携わっているようで、
適度に響きも収録されておりました。

NHKにも、出来ればもう一頑張りしてもらって、
シカゴ響との演奏を、今度はCD化してもらいたいものです。

さて、今夜は私も好きなブル9とブル4ですね。
録画・録音スイッチを入れたら、寝ることにします。
お休みなさい。

liebejudith さんのコメント...

LONGさん、
第5番は新日フィルとのCDもなかなか良い演奏です。
5番は特に管が難しいので、技術のあるオケが望まれますね。
昨日の第9番もまた、良い演奏でしたね。
実はCDも持っているのですが、映像付きで観るとまた違う楽しみがありました。

匿名 さんのコメント...

度々失礼致します。

本日早朝に放映されたブル4のコンサートを、当時聴きに行く予定だったのですが、
仕事の関係で断念しました。
後日BSで放送されたときの音声をDATに録音し、その後何度も聴いて楽しみました。
(ブル4のCDは、翌日の演奏が大部分のようです。)

あのとき無理してでも行っておけば良かった、と後悔しています。

つい先日まで、CSのミュージックバードで朝比奈特集を放送していましたが、
出来れば年内に同様の特集が更に放映(放送)されることを望んでやみません。

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